HACK TO THE FUTURE

実験記録12銘柄記事13本配分は2026-08-11時点

NU

12.4%はどこから来たか

Nu Holdingsの2026年第2四半期決算は、前四半期に悪化した指標がほぼすべて戻ってきた内容だった。

リスク調整後の純金利マージンは9.5%から290ベーシスポイント拡大して12.4%。純利益は同社史上初めて10億ドルを超え、11億ドル(前年同期比49%増)。ROEは33%。15〜90日の延滞率は16ベーシスポイント改善して4.8%。顧客数は約400万人増えて1億3,900万人、顧客一人あたり月間収益は約17ドル(同社2026年8月13日付・第2四半期決算リリース、成長率は為替中立ベース)。

前四半期に会社が「これは季節性だ」と説明した悪化は、実際に季節性として戻った。株価は8月13日の終値13.93ドルに対し、時間外で15.06ドルまで8%あまり上昇している(stockanalysis.com)。

ただし同じ決算の中で、90日超の延滞率は35ベーシスポイント悪化して6.9%になっている。

改善と悪化が、同じ四半期に同時に起きている。

二つの延滞率は、同じ債権を時間差で見ている

これは矛盾ではない。

15〜90日の延滞率は入口で、90日超は出口である。第1四半期に入口で膨らんだ分は、回収されなければ第2四半期に出口へ移動する。だから入口が改善し出口が悪化するのは、同じ一つの現象を二つの断面から見た結果にすぎない。会社側の説明もそうなっている。

つまりここまでは、前四半期に立てた仮説の答え合わせとして、素直に読める。季節性という説明は、おおむね正しかった。

問題はその次にある。

マージンの拡大分を分解する

リスク調整後NIMが12.4%まで跳ねた理由を、会社は明示している。

純金利マージンそのものが180ベーシスポイント拡大して22.9%になった。その要因として挙げられているのは、ポートフォリオの成長、無担保貸出への構成シフト、そして前四半期に予告した意図的なリスク拡大の三つだ。一方で与信コストは前四半期比9%減の17億ドル。分子が膨らみ、分母側のコストが季節的に縮んだ。両方が同じ方向に効いた四半期だった。

ここで注意が必要なのは、三つの要因のうち二つが「リスクを取ったこと」を意味している点である。

無担保貸出は103億ドル、担保付は31億ドル、クレジットカードは260億ドル。無担保の比率を上げれば利回りは即座に上がる。だが貸倒は即座には来ない。金利は先に入り、損失は後から来る。この時間差こそが、貸金業の損益計算書がしばしば楽観的に見える理由だ。

したがって12.4%を新しい基準線として扱うのは早い。この数字が実力なのか前借りなのかは、リスクを拡大した四半期の請求書が届く四半期にならないと分からない。90日超延滞率が6.9%へ上がったこと自体は季節的な移動で説明がつくが、その水準は2024年第3四半期に記録した7.0%のピークに再び近づいている。

誤解のないように書いておくと、これは経営が不誠実だという話ではない。むしろ逆で、リスクを広げる意図は前の四半期に予告されており、その通りに実行され、結果も分解可能な形で開示されている。開示は誠実だ。問題は受け取る側にある。同じ12.4%が、「実力の証明」にも「時間差の前借り」にも読める。読み手が先にどちらを期待していたかで、結論が決まってしまう。

効率性比率も、方向としては逆に動いた

もう一点。効率性比率は17.6%から19.5%へ悪化している。理由は不動産費用とマーケティング費用が第1四半期から第2四半期へずれ込んだことと、国際展開への投資の継続。会社は年間で20%程度へ向かうと以前から示していたから、これは想定内の戻りである。

つまりこの四半期は、収益性の指標が良くなり、費用の指標が悪くなり、延滞は入口が良くなって出口が悪くなった。全部を一方向に並べて読める四半期ではない。

それでも採用はしない。理由は決算ではない

ここまで数字を分解しておいて言うのも妙だが、私の結論はこの決算の内容によって決まっていない。

このポートフォリオでは、銘柄を「関所」という基準で選んでいる。関所とは、その産業で誰が勝っても通行料が入る位置のことだ。試金石は一つで、需要が後退した局面で値段を守れたかどうかである。図の上で中心に描かれることではなく、実際に徴収した実績を求めている。

Nuはこの基準の逆側にいる。既存の銀行より安いことで勝ってきた企業だ。手数料を取らないこと、口座維持費を求めないこと、それ自体が競争力だった。この構造は間違いなく強い。ブラジルで1億1,800万人、月次アクティブ率86%超という数字は、その強さの証拠である。

だが安さで勝った企業は、値上げでは守れない。価格の設定者ではなく、受け手である。

加えて、損益の主因が企業努力の外側にある。ブラジルの政策金利、レアルの対ドル水準、消費者与信サイクル。どれも経営陣が優秀かどうかとは無関係に動く。12の枠は、そういう変数が損益の主因にならない位置に配分してある。

不採用、ただし種類を区別して

したがってNu Holdingsは不採用とする。

重要なのはその種類だ。今回の不採用は循環的なものではなく、構造的なものである。次の四半期で90日超延滞率が下がっても、リスク調整後NIMが12.4%に定着しても、結論は変わらない。変わるとすれば価格決定力の性質そのものが変わったときだけで、それは決算の一行では起こらない。

だから再評価のタスクも作らない。

冷たい判断に見えるかもしれないが、逆である。監視対象を増やせば、四半期ごとに確認すべき項目が増える。項目が増えれば、一つあたりに割ける時間は減る。「一応見ておく」を積み上げた先にあるのは、どれも十分には見ていない状態だ。見ないと決めることも、見ると決めることと同じだけ判断である。

良い会社と、この12枠に入る会社は違う。前者は世界にいくらでもある。後者は12しかない。