混雑した日に、通行料を下げた
8月13日の朝、Figure Technology Solutionsの第2四半期決算を開いた。最初に目に入ったのは売上113%増でも純利益192%増でもなく、指標表の隅にある3.6%という数字だった。1年前は4.0%だ。取扱高が132%増えている四半期に、1ドルあたり取れる分は0.4ポイント減っている。この一行のせいで、私はこの会社を12銘柄の枠に入れないことにした。
決算そのものは、文句のつけようがない
同社が8月13日に開示した数字を並べる。純収益2億2559万ドル、前年同期比113%増。純利益8744万ドル、192%増。調整後EBITDA1億1938万ドル、マージン54.6%。消費者ローンマーケットプレイスの取扱高は42.6億ドルで132%増、うちFigure Connect経由が27.7億ドルと262%増え、全体の65%を占めるところまで来た。組成パートナーは四半期で102社増えて489社。オペレーション・処理コストは取扱高比67ベーシスポイントまで下がった(前年同期は79bp)。7月には週次の申込額が10億ドルを超えたとCEOのマイケル・タネンバウムがコメントしている。第3四半期のガイダンスは48億〜52億ドル。
上場からまだ11か月しか経っていない会社の数字としては、ほとんど出来過ぎに見える。事実、私はここで手が止まった。止まるべきだったのはもう一段先だ。
【通行料】と【通り道】は違う
私が銘柄を選ぶときの唯一の関門は、誰が勝っても通行料が入る場所かどうか、という点にある。半導体の製造やEUV露光装置、EDAツールは、その先で誰が覇権を取ろうと必ず一度は通される場所だ。S&P Globalの格付事業も似ている。債券を発行する側が誰であれ、格付という関所を通らないと市場に出られない。
関所であることの決定的な証拠は、成長率ではなく単価だ。交通量が増えたときに通行料が維持されるか、上がるか。それが「通らざるを得ない」ことの経済的な現れになる。
Figureはこの四半期、交通量を2.3倍にして、通行料を1割下げた。
読み方は二つある。ひとつは、バランスシートを使わないFigure Connect経由の比率が上がった結果の構成変化だという読み方だ。取り分は薄いが資本は要らない。調整後EBITDAマージンが7.4ポイント改善したのは、この読み方を支持する。もうひとつは、単純に競争で削られているという読み方だ。489社のパートナーを1四半期で102社積み増したなら、そのうち何割かは条件で取ったはずだ、という見方は自然に出てくる。
今期の数字は、どちらの読み方とも矛盾しない。矛盾しないというのは、判定できないということだ。
売上の中身を見ると、まだ金融会社である
損益計算書を分解すると、もう少しはっきりする。純収益2億2559万ドルのうち、マーケットプレイスの手数料にあたるエコシステム・テクノロジー手数料は7287万ドル。全体の32%だ。残りはローン売却益5757万ドル、サービシング資産の評価益2909万ドル、受取利息2281万ドル、組成手数料2635万ドル——つまり貸して、売って、回収権を持つという、伝統的な貸金業の経済である。
前年同期の手数料比率は27%だったから、方向は正しい。ただし1年で5ポイントだ。この速度なら、プラットフォーム収益が貸金収益を上回るまでにあと数年かかる。
いま買うということは、「関所を建設中の金融会社」を、完成後の関所の値段で買うことになる。
利益の伸びを、もう少し正確に言う
純利益192%増という見出しは、税金の効果を含んでいる。税引前利益は8299万ドルで、前年同期の3335万ドルから149%増。差の43ポイントは、今期が444万ドルの法人税ベネフィット、前年が336万ドルの税負担だったことから出ている。
株式報酬費用は2610万ドルで、前年同期の285万ドルから9倍になった。上場企業になったのだから当然だが、調整後EBITDAではこれが足し戻される。しかも同社は今期から買収関連費用を、3月末からは有価証券の評価差損益とYLDSの調達コストを、それぞれ調整項目の定義に加えたと自ら注記している。過去分は遡って作り直されているので比較可能性は保たれているが、定義が半年に二度動く利益指標を軸に議論するのは筋が悪い。
希薄化後株式数は2億4697万株。前年同期は8777万株だった。1株利益0.35ドルという数字は、この分母の上に乗っている。
そして「キャピタルライト」を掲げながら、販売目的で保有するローンは5億9740万ドルへ47.7%増えている。手元現金は14.4億ドルあるので今すぐ問題になる話ではないが、資本を使わないモデルだと言い切るには、バランスシートが太り過ぎている。
Kiaviは、事業を広げると同時に、資産の性質を変える
6月10日に発表されたKiavi買収は、総額7億1700万ドル。うちFigureが5億3800万ドル、Sixth Streetが1億7900万ドルを負担し、Kiaviのバランスシート上のローン資産はSixth Street主導のJVへ、技術と運営基盤はFigure本体へ入る。資金は7月に価格決定した6億ドルのシニア無担保債で賄う。年間70億ドル超のファーストリーン組成をFigure Connectに乗せる、というのが会社側の説明だ。
ここで注意したいのは、乗ってくる資産の性質だ。Kiaviの主力であるRTL(住宅転売用の短期つなぎ融資)は、住宅を買って直して売る投資家向けの融資である。HELOCよりも住宅価格と金利に素直に反応する。会社は関所の間口を広げる話として説明しているが、私には循環資産の比率を上げる話にも読める。取引の終期は11月30日で、規制絡みの条件で不成立となった場合にFigureが支払う解約金は2500万ドルと開示されている。
正直に書いておくべきこと
私は最初に、Kiaviの買収説明資料を開いた。決算の数字を見て気に入って、それから「入れる理由」を探しに行ったということだ。手つきとして逆だった。棄却の基準を先に置いてから数字を見るのでなければ、基準は基準として機能しない。
もうひとつ。仮に今日Figureを気に入っていたとしても、12の枠は四半期レビューまで動かせない。入れるなら、キル条件が発火していない銘柄を株価や興奮を理由に外すことになる。それをやり始めた時点で、この実験は終わる。
インサイダーの動きも書いておく。Quiverの集計では、直近6か月のインサイダー取引51件はすべて売却で、買いはゼロだった。上場後のロックアップ解除や税金対応が混じるので単独では材料にならないが、少なくとも「安いから拾っている人」は社内にいない。時価総額は約61.6億ドル。IPO価格は昨年9月10日の25ドル、初日終値は31.11ドルだった。売上が倍になり利益が3倍になった11か月を経て、株価はその初日終値の水準に届いていない。市場もまた、この会社が関所なのか通り道なのかを決めかねている。
判断を変える条件
好業績では変えない。棄却した理由そのものが解けたときだけ変える。
- ネットテイクレートが2四半期連続で3.6%以上を維持、または上昇すること
- エコシステム・テクノロジー手数料が総収益の50%を超えること
- HELOC組成環境が悪化した四半期にも、Figure Connectの取扱高が前四半期比でプラスであること
最初の判定は第3四半期決算。前年は11月13日の開示だったので、同じ頃を見込んでいる。3つとも満たせば、Figureは金融会社ではなく関所だったということになる。ひとつでも欠ければ、これは良い金融会社のままだ。良い金融会社を買わない理由なら、いくらでもある。
関所かどうかの見分け方は、混雑した日に通行料が上がるかどうかだ。今期のFigureは、混雑した日に通行料を下げた。それが戦略なのか競争なのかは、まだ誰にも分からない。分からないものに12分の1を割り当てる度胸は、私にはない。