MDB MongoDB 2026年Q2決算|30%成長のどこが本物か
MongoDBの2026年7月期Q2は売上30%増と数年ぶりの加速を見せたが、時間外で13%下げた。加速を作ったのはAtlasではなくEAであり、通期の引き上げ幅7,000万ドルの過半は終わった四半期の取り分だった。
予想を全部上回り、通期を引き上げ、それで13%下げた。市場が読んでいたのは終わった四半期ではなく、次の四半期のほうだ。
売上7億7,180万ドル、前年同期比30%増。同社にとって数年ぶりの加速である。非GAAP EPSは1.90ドルで市場予想1.61ドルを18%上回り、非GAAP営業利益率は24%(前年同期15%)。フリーキャッシュフローは1億3,760万ドルとほぼ倍増し、GAAP黒字は3四半期連続になった。通期見通しも29.9〜30.3億ドルへ引き上げている(2026年9月1日発表、MongoDB決算リリース。同社の呼称ではFY2027第2四半期、7月末締め)。
数字の並びだけ見れば、文句のつけようがない。
そして時間外で13.2%下げた。通常取引の終値434.26ドルから377ドルへ。直前の1か月で株価は34%上げており、52週高値は472.31ドル(Morningstar、8月31日時点)。落ちたのは事実ではなく、事実に付いていた値段のほうだった。
加速した30%を作ったのは、Atlasではない
分解するとよく分かる。
- Atlas(クラウド版):約29%増。これで5四半期連続の29%である
- Enterprise Advanced(自社運用版)とその他:約36%増
- サブスクリプション全体:7億4,710万ドル、31%増
- サービス:2,460万ドル、29%増
Atlasは前四半期時点で売上の75%を占める主力だが、成長率は動いていない。5期連続でぴたりと29%だ。つまり総成長率を25%から30%へ押し上げたのは、残り4分の1のEAである。
そのEAは、第1四半期には13%増でしかなかった。会社自身が第2四半期を「約20%増」と置いていた。それが36%で着地した。
自社運用ライセンスは大口顧客の契約更改に売上が集中しやすく、四半期ごとの振れが大きい。会社が自分でガイダンスを16ポイント外したという事実そのものが、この部分の読みにくさを示している。オンプレミスでAIアプリを動かしたい金融・政府系の需要が本物である可能性は十分にある──ただし1四半期の36%は、それを証明する材料としてはまだ短い。
引き上げ幅7,000万ドルのうち、4,000万ドルは終わった四半期の分だ
通期見通しは29.2〜29.6億ドルから29.9〜30.3億ドルへ上がった。中央値で7,000万ドルの上積みである。
一方、第2四半期の会社ガイダンスは7億2,900万〜7億3,400万ドルだった。実績7億7,180万ドルとの差は約4,000万ドル。CFOのマイク・ベリーは決算説明会で「第2四半期のビート分を通期に繰り越し、下期を引き上げる」と述べているが、繰り越し分を差し引けば、下期に新たに乗せた金額は3,000万ドル程度にとどまる。年間3,000億円規模の売上に対して1%だ。
上方修正という言葉の中身は、ここまで薄めて読める。
第3四半期ガイダンスが置いた21%
会社が示した第3四半期の売上見通しは7億5,600万〜7億6,100万ドル。前年同期の6億2,830万ドルに対して20〜21%増である。
30%から21%へ。しかも、たった今報告した7億7,180万ドルより低い。前四半期比で減る見通しを会社が自ら置いている。EAが今期に前倒しで乗った、という読みと整合する数字だ。
市場が反応したのはおそらくここだった。決算が悪かったのではない。決算の先が、決算ほどではなかった。
RPOの91%増は何を先取りしたのか
残存履行義務(RPO=契約済みでまだ売上になっていない金額)は15.2億ドルで91%増、うち1年内に売上化するcRPOは7億9,730万ドルで73%増。請求額ベースでは7億8,750万ドルの35.7%増だった。
前を向いた指標としては強い。ただしRPOは、契約期間が長くなるだけでも膨らむ。3年契約を取れば1年契約の3倍が積み上がる。売上の先行指標であると同時に、「いつ売上になるか」は契約の長さ次第で、91%という伸びがそのまま来期以降の成長率になるわけではない。
キャッシュのほうは、フリーキャッシュフロー・マージンが17.8%で、前四半期の28.7%から下がった。もっとも第1四半期は年間前払いが集中する時期であり、この落差の大半は季節性で説明がつく。前年同期比でほぼ倍増しているという事実のほうを重く見るべきだと考えている。
データベースは、通行料を取る側か
ここからは投資の話になる。私が銘柄を見るときの最初の関門は一つで、AIで誰が勝っても料金所を通らざるを得ない位置にいるか、それとも料金を払う側かを見る。
MongoDBの粗利率は74%(前年同期71%)。改善している。だが純粋なソフトウェア企業が85〜90%を並べるのに対して、10ポイント以上低い。理由は単純で、Atlasは他人のデータセンターの上に建っているからだ。AWS、Azure、Google Cloudに賃料を払いながら、その上で自社の課金をしている。売上が伸びるほど、賃料も一緒に伸びる。
もう一つ。データベースは、アプリを作る瞬間に開発者が選ぶ。一度乗せてしまえばデータの重みで剥がれにくくなるのは事実だが、乗せるかどうかは新しいアプリが生まれるたびに毎回勝負になる。PostgreSQLも、DynamoDBも、クラウド各社の自前データベースも、同じ入口に立っている。
料金所というより、よくできた有料道路の一本だ。速くて快適で、実際に多くの車が通る。だが迂回路がある。だから私は12銘柄の枠にMongoDBを入れない。
この判断が変わる条件は、成長率ではない。二つだけ挙げておく。ひとつは、Atlasの粗利率が上がり続け、クラウド事業者への支払い比率が構造的に下がっていること。もうひとつは、EA側で値上げが通ることを会社が具体的に示すこと。どちらも「速く走れているか」ではなく「通行料を決めているのは誰か」を測る指標だ。売上が何%伸びたかは、この問いに答えない。
次に見るのは10月末で締まる四半期である。EAの36%が続くのか、それとも今期に前倒しされただけだったのかは、そこで分かる。会社が置いた21%を上回れば前者、届かなければ後者だ。
答え合わせの日付は、もう決まっている。