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CRM セールスフォース決算|増益の正体はAnthropic株

セールスフォースのFY27第2四半期は非GAAP一株利益5.90ドル・103%増。だが増益の主因はAnthropic株を含む戦略投資の評価益26億ドルで、通期利益見通しの引き上げ幅もほぼ同額だった。自力の売上引き上げは1億ドルにとどまる。

一株利益が2倍になった。増えた分の出どころは、まだ売っていない株の値上がりだった。

数字の並びだけ見れば、文句のつけようがない四半期だった。8月26日の引け後に出たセールスフォースの5〜7月期は、売上高113億ドルで前年同期比11%増、非GAAPベースの一株利益は5.90ドルで103%増。会社自身が5月に置いていた見通しは3.25〜3.27ドルだったから、2.6ドル以上の上振れである。通常取引の終値は203.61ドル、時間外では14%跳ねた(CNBC、8月26日)。

問題は、その2.6ドルがどこから来たかだ。

5.90ドルのうち、事業が稼いだのはいくらか

発表資料によれば、四半期のGAAP純利益は35億ドル。前年同期の19億ドルから大きく増えている。ただしCNBCが伝えたとおり、この増加にはAI企業Anthropicへの出資分を含む戦略投資の評価益26億ドルが乗っている。Anthropicは5月の資金調達で9,650億ドルの評価を受けており、その値上がりがそのままセールスフォースの損益計算書に流れ込んだ。

そしてこの会社の場合、戦略投資の評価益や評価損は非GAAPの一株利益からも除かれない。5.90ドルという数字の中では、CRMソフトを売って稼いだ利益と、保有している非上場株の値札が上がった分が、区別されずに同居している。

通期見通しの引き上げ幅が2.60ドルだった理由

ここが今回いちばん静かで、いちばん雄弁な数字だ。

5月時点のFY27通期の一株利益見通しは14.06〜14.12ドル。それが今回16.67〜16.71ドルへ引き上げられた。中央値で2.60ドルの上積みである。一方、第2四半期単体の上振れは2.64ドル。

通期の利益見通しは、この四半期に起きた一過性の評価益を足しただけで、残る2四半期の稼ぐ力については何も上乗せされていない。 会社は注記で、見通しは戦略投資ポートフォリオの価値が変わらない前提だと明記している。Anthropicの値札が動けば、16.69ドルは上にも下にも動く。事業の予想とは別種のものが、利益予想の中に入り込んでいる。

売上見通し2億ドル引き上げの中身

売上側については、会社は不都合なほど正直に内訳を出している。通期売上見通しは461〜464億ドルへ2億ドルの引き上げ。その内訳は、有機成長が1億ドル、買収予定のContentfulとFinの寄与が2億ドル、為替の逆風がマイナス1億ドル。

461億ドルの事業に対して、自力で積み増した分は1億ドル。率にすれば0.2%である。「ガイダンス引き上げ」という見出しの実体は、ほぼM&Aだ。

cRPO14%と有機成長6%台のねじれ

反対材料も置く。ここを飛ばすと、ただの悪口になる。

契約残高のうち12か月以内に売上化する分(cRPO)は335億ドルで14%増。第1四半期の為替中立13%から加速している。受注の先行指標としてはこれが明確な好材料で、時間外で14%買われた理由の相当部分はここにあるはずだ。ロビン・ワシントンCFOは、新規受注額の伸びが4年で最も強いとコメントしている。

一方、四半期売上113億ドルのうち4.56億ドルはInformaticaの寄与だと会社が明示している。これを差し引くと、既存事業の伸びは6%台半ばまで落ちる。第1四半期の同じ計算では8%台だった。下期の有機的な再加速は約束され続けているが、上期の実測は減速している。

もう一つ、素直に読むと引っかかる行がある。Agentforceの年間経常収益は15億ドル超・240%増と発表されたが、同じ箇所に「第2四半期からAgentforce ARRにはAI関連製品、SlackbotとHeadless 360を含める」と書かれている。集計対象を広げた四半期の伸び率を、前年と同じ物差しの伸びとして読むことはできない。

Claudeforceは通行料を取る側への一歩か

同じ日、セールスフォースはAnthropicとの提携拡大とClaudeforceを発表した。営業担当者がClaudeの中でメールを書き、情報を引き出し、顧客記録を更新できるようにする仕組みだという。

顧客にとっては便利で、この会社にとっては微妙な一歩だ。仕事が起きる画面が、自社の画面からモデル提供者の画面へ移る。データと業務ルールの置き場としては残るが、毎日指で触られる場所ではなくなる。

そして今期この会社がいちばん大きく儲けたのは、ソフトを売ったことではなく、モデルを作っている側の株を持っていたことだった。26億ドルという数字は、AIの階層のどこに価値が溜まっているかを、決算書が偶然に白状してしまったようなものだ。いまのところ通行料を取る側にいるのは計算機と設計ツールとモデルの層で、その上で動くアプリケーションの層ではない。セールスフォースは払う側にいる。

ベニオフCEOが今回持ち出した「AIforce」——社内のデータと業務ルールと権限管理を、あらゆるエージェントとモデルに開くための土台という構想は、まさにこの位置を取る側へ引き戻す試みだ。主張としては筋が通っている。裏付けが決算書に現れる四半期が来るなら、そのとき見るのは受注でも利益でもない。座席の数と切り離された売上が伸びているかどうかだけだ。

判断は10月末まで動かさない。値段の安さも、四半期の見出しの良さも、動かす理由には入っていない。