AI需要に投資し、AIバブルから資産を守る12銘柄
勝者を当てにいくのをやめて、誰が勝っても通る道の上に立つ。4つの層に分けた理由と、入れなかった銘柄。
これからの投資のことを考えると、ほぼ必ず「AIはバブルなのか」「AIバブルは来るのか」という悩みにぶちあたる。
しかし、正直に言って「誰にもわからない」が答えだと思います。過熱している部分は間違いなくあると思うし、同時に、本当に需要がある部分もある。その二つがどこで線引きされるのかを、当てられる気がまったくしない。
だから、当てにいくのをやめて、代わりに、当てなくても済む形を作れないかと考えました。それがこの12銘柄のポートフォリオで、この記事はその記録にあたります。
なぜポートフォリオをAIを軸に据えたのか
「AIが有望だから」ではなく、有望かどうかは、正直まだ確定していない。
軸に据えた理由は、資金の流れが尋常でないこと。Alphabetは2026年第2四半期の決算で、その年の設備投資見通しを1,950億〜2,050億ドルに引き上げた。1社で、である。しかも2027年はこれをさらに上回ると明言している。同じことを、規模の差はあれ他のハイパースケーラーもやっている。
これだけの金額は、どこかで必ず誰かの売上になる。問題は「誰の」売上になるかだ。そしてそこは、読み違える確率がかなり高いと思っている。
3年前、AIの勝者を予想しろと言われたら、まず間違えていた。今も、たとえばOpenAIとGoogleとAnthropicのどれが最後に立っているかを当てる自信はない。モデルの優劣は半年で入れ替わる。
なので、勝者を当てるのではなく、誰が勝っても必ず通る道の上に立つ、という発想に切り替えた。関所です。通行料を取る側にいれば、通る車がどのメーカーでも構わない。
そのうえで、道そのものが細くなった場合にどうするか。ここが「バブルが弾けても耐える」という部分で、AIとまったく関係のない収益源を、ポートフォリオの3分の1近く確保することにしました。
おそらく、このポートフォリオでは、$NBISなどのネオクラウドや急騰したメモリ銘柄など、今後も急騰を指を咥えて見ているだけの状況になるポートフォリオになると思う。
しかし、阿鼻叫喚のAIバブル急落にも耐えられる可能性が高い銘柄で構成することにしました。
それを整理すると、四つの層で組んでいます。
- 関所 —— TSMC / ASML / Cadence / Broadcom
- 需要を作る側で、かつ自前の収益源を持つ —— Alphabet / NVIDIA
- 補完財としての電力 —— GE Vernova / Constellation Energy
- AIが止まっても回る現金製造機 —— Eli Lilly / Intuitive Surgical / S&P Global / TransDigm
以下、一社ずつ。
第1層:関所
$TSM ―― 最先端で作るなら、ここを通るしかない
いちばん厚く持っている。理由は単純で、代替がないから。
2026年4〜6月期の売上のうち、7nm以下の先端プロセスが77%を占めた。内訳は3nmが30%、5nmが33%、そして2nmが初めて3%計上されている。売上総利益率は67.7%。これは「工場」の数字ではない。
GPUだろうがカスタムASICだろうが、最先端の設計は結局ここで焼かれる。誰が設計競争に勝つかを当てられなくても、焼く場所は当てられる。
台湾有事だけは別物で、これが起きたら設計思想ごと再評価するしかない。そこは正面から認めておく。
$ASML ―― 通行料をさらに上流で取る
そのTSMCですら、露光装置はASMLからしか買えない。EUVは事実上の独占で、代わりがない。
2026年第2四半期の売上は93億ユーロ、通期見通しはこの年だけで二度上方修正され、430億〜450億ユーロになった。さらに2027年にEUVとDUV液浸の生産能力をそれぞれ30%増強し、2028年にもう30%を検討するという。装置が足りていない、ということだ。
中国の国産DUV量産報道でここ数か月は株価が重い。ただ、実際の受注と会社の見通しは逆方向に動いている。株価の下落と事業の悪化を混同しないようにしている。
$CDNS ―― 設計が増えるほど儲かる
意外と知られていない関所。チップを設計するには半導体設計自動化(EDA)ソフトが要り、この分野は実質2社の寡占だ。
面白いのは、カスタムチップが増えれば増えるほどCadenceの出番が増えること。ハイパースケーラーが自社チップを作るという流れは、NVIDIAには逆風でも、EDAには純粋な追い風になる。
2026年第2四半期の売上は前年同期比24%増、受注残は過去最高の81億ドルに達した。会社側は「エージェント型AIの収益化が急に立ち上がることは見通しに織り込んでいない」と明言したうえでの上方修正で、これは信頼できる種類の数字だと思う。
$AVGO ―― NVIDIAの反対側にも足を置く
もし「ハイパースケーラーが自前チップに移行してNVIDIAが崩れる」というシナリオが起きるなら、その受け皿がここになる。
2026会計年度第1四半期のAI関連売上は84億ドルで前年同期比106%増、AI関連の受注残は730億ドル、うちカスタムアクセラレータが530億ドル。顧客はGoogle、Meta、OpenAI、Anthropicなどが公表されている。
NVIDIAとBroadcomを両方持つのは矛盾しているように見えるかもしれないが、これが「どちらが勝つか当てない」ということの実装。
第2層:需要を作る側
$GOOGL ―― 唯一、全部を自前で持っている
モデル、チップ、データセンター、配布チャネル、そして広告という現金源。この5つを全部持っている会社は他にない。
2026年第2四半期は売上が24%増、Google Cloudが82%増の248億ドル、受注残は5,140億ドル。Geminiアプリの月間利用者は9.5億人。
ただし正直に書くと、この四半期のフリーキャッシュフローはマイナス59億ドルだった。設備投資が重すぎて、稼いだ現金を全部飲み込んでいる。これは弱点として認識している。$GOOGLを持ち続ける前提は、この投資がいずれ回収に向かうことで、そこが崩れたら判断を変える。
そして、最近のショッキングな人材離れは、今後のAIモデルにどう影響するかは気になるところで、最新モデルの質を見極める必要はある。
$NVDA ―― 持たない理由が見つからない
正直、いちばん悩んだ。すでに大きすぎるし、期待も織り込まれている。
それでも入れたのは、直近の決算(2026年5月発表、2026年4月26日締め)でデータセンター部門が752億ドル、前年同期比92%増という数字を出しているからだ。全社売上の9割以上がここから来ている。
警戒しているのは業績よりも構造で、ベンダーファイナンス的な取引の膨張と、顧客の内製化。ただ、それが決算に現れる前に売る、というのはやらないと決めている。
第3層:電力
AIの制約は、もうチップではなく電気になりつつある。ここは半導体より遅れて効いてくる補完財だと考えている。
$GEV ―― ガスタービンの順番待ち
2026年第2四半期の受注は242億ドル、受注残は1,760億ドル。ガスタービンの契約容量は前四半期の100GWから116GWに増え、会社は年末に125GWを見込んでいる。データセンター向けの受注は上半期だけで50億ドルを超え、前年通年の2倍以上になった。
工場を増やしているのに追いつかない。この種の需給は、決算1回でひっくり返らない。
$CEG ―― 24時間365日の電気を売れる数少ない会社
2026年1月にCalpineの買収を完了し、原子力にガス・地熱が加わって発電容量は約60GWになった。Metaとは1,121MW・20年のPPAを結んでいる。
データセンターが欲しいのは「安い電気」ではなく「絶対に止まらない電気」で、それを長期契約で売れる事業者は限られる。
正直に言えば、この銘柄がいちばん「AI需要が剥落したら困る」側にいる。第4層で埋め合わせている、という位置づけだ。
第4層:AIが止まっても回るもの
ここが記事のタイトルの後半、「AIバブルには賭けない」の実装部分になる。
$LLY ―― 需要がAIとまったく連動しない
肥満と糖尿病の薬。2026年第1四半期の売上は198億ドルで前年同期比56%増、MounjaroとZepboundの2剤だけで128億ドル、全売上の約65%を占める。4月には経口GLP-1のFoundayo(オルフォルグリプロン)が米国で承認・発売された。
人は痩せたいし、糖尿病は治らない。
$ISRG ―― 消耗品ビジネス
手術支援ロボット。2026年第2四半期の手術件数は前年同期比16%増、設置台数は11,710台で12%増。売上の85%が器具などの継続収入で、機械を売る商売というより、機械を置いて毎回課金する商売になっている。
ただし米国の伸びは鈍化した。会社はACAの保険料補助失効で患者が待機的手術を先送りしている影響を挙げている。株価は52週高値から大きく下げた。
私はこれを「事業が壊れた」のではなく「需要が後ろにずれた」と読んでいる。読み違えている可能性は当然ある。
$SPGI ―― 市場そのものに課金する
格付け、指数、データ。2026年第2四半期は全体で11%増収、格付けが17%増、指数が20%増。ベンチマーク事業が売上の約3分の2、営業利益の8割超を稼ぐ。S&P500連動のETFは、6月に単体で運用資産1兆ドルを初めて超えた。
ここで一つ面白い数字がある。上半期に格付けを受けた起債のうち、1,690億ドルがハイパースケーラーによるものだった。AIデータセンターを建てるための借金にも、この会社は手数料を取っている。AIに直接賭けていないのに、AIの資金調達から収益が上がる構造になっている。
$TDG ―― いちばんAIから遠い
航空機部品。しかも大半が単一供給元の交換部品で、認証の壁があるため他社に替えられない。8月5日に発表された2026年度第3四半期のEBITDAマージンは52.8%だった。部品メーカーの数字ではない。
飛行機は飛べば壊れ、壊れれば必ずこの部品を買う。AI相場が何であろうと関係ない。この「関係のなさ」に価値があると考えて入れている。
AIが冷えたら、この12銘柄はどうなるか
深刻な打撃を受けるのは、NVIDIA、Broadcom、Constellation、GE Vernova。ここは覚悟している。TSMCとASMLとCadenceは、AI以外の半導体需要が残るぶん傷は浅いはずだが、無傷ではない。
一方で、Eli Lilly、Intuitive Surgical、S&P Global、TransDigmの4社は、原理的にはほぼ影響を受けない。この4社がAIバブルのクッションとして占めている。
つまり全体としては、AIが冷えれば当然大きく下がる。そのうえで、ゼロにはならず、回復の足場は残る。「勝つ」設計ではなく「生き残ってから勝つ」設計にしてある、というのが正確な言い方だと思う。
入れなかった銘柄の話
12銘柄は固定にしている。それぞれのテーマだけを見ればポートフォリオに加えたくなるがそれでは、$QQQなどに近づいていくだけだから、J1・J2のような入れ替え制で運用しようと考えています。決算までに入れ替え理由を検討して、決算を見て弱い銘柄を入れ替えていく予定。ただ、AIの恩恵を受けていく銘柄を想定しているため、そうそう入れ替えは起こらない、つまり長期投資としての側面が強い。
$APH ―― コネクタ大手で数字は良い。ただ、設備投資サイクルへの感応度がすでに持っている銘柄と重なっていて、分散にならないと判断した。
$MSFT ―― 質は文句なし。ただ現状は「通行料を払う側」の色が濃い。ここは結論を出しきっていなくて、Azureの成長率とキャッシュフローの改善を条件に、10月のレビューで再検討する予定にしてある。
$MU ―― HBMの需要は本物だと思う。ただメモリは構造的にサイクル株で、価格が安く見えることは優位性の証拠にならない。
$NBIS ―― GPUクラウド。ここは典型的に「通行料を払う側」で、しかも資本構造が重い。
ひとつ自分に課しているのは、下がった銘柄を売って上がった銘柄に乗り換えることを禁じる、というルール。これをやり始めると、判断ではなく気分で動くことになる。入れ替えは四半期に一度、決めた日にしか行わない。
「柔軟である」ことと「その場で動く」ことは違う、と思っている。検討はいつでもする。実行はカレンダーの上でしかしない。
運用ルール
損切りをしない。株価が下がったことは売る理由にならない。売るのは、あらかじめ銘柄ごとに書き出しておいた「テーゼが壊れた条件」が実際に発火したときだけ。たとえばTSMCなら、先端プロセス比率が2四半期連続で低下すること、粗利率が50%を割ることなど。これらはすべて遅行指標で、必ず出遅れる。それは承知のうえで、恣意的に売れる余地を消すほうを選んだ。
ルールの変更は四半期レビューでのみ行う。急落の最中に方針を変えない。これがいちばん守るのが難しいと思っている。