HACK TO THE FUTURE

実験記録12銘柄記事35本配分は2026-08-18時点

GOOGL

GOOGL アルファベット|TPU増産計画の台数は誰が決めるのか

2027年のTPU生産台数は500万台から1,000万台まで予測が割れ、8月17日には下方修正も出た。台数を決めているのは需要ではなくCoWoSの割り当てであり、アルファベットを見るべき指標は台数ではなく四半期マイナス59億ドルのキャッシュフローだと整理した。

「2027年に3倍」という数字は、Googleについての事実ではない。台湾にある後工程ラインの空き具合についての事実だ。

同じ2027年のTPU生産台数について、いま市場に出回っている数字は500万台から1,000万台まである。倍の開きだ。しかも先週、その一部が下方に動いた。

数字を並べると開きの大きさがわかる。Google自身の見通しとして報じられているのは2026年430万台、2027年1,000万台。モルガン・スタンレーは2027年約500万台・2028年約700万台へ、従来の300万台・320万台から引き上げた。The Informationは2027年に500万台超と報じている。そしてSemiAnalysisは8月17日、2026年のIronwood(v7)を320万台から270万台へ、2027年のv7とv8iの合計も従来の600万台を下回る水準へ引き下げた。この報道でブロードコム株は5.94%、メディアテック株も4%超下げている。

冒頭の「約880万台」という数字については、一次情報にたどり着けなかった。確認できたのは上の分布だけだ。倍の幅で割れている数字を「3倍」と要約できるのは、どの推計を採るかを先に決めているからにすぎない。

なぜ下方修正の理由がCoWoS-Sなのか

引き下げの理由が需要ではないところが、この話の核心にあたる。SemiAnalysisが挙げたのは供給側、それもCoWoS-Sという先端パッケージング工程の増設が計画どおりに進んでいないことだった。ブロードコムの2026年のCoWoSウェハ枠は25万枚から21.5万枚へ削られている。

つまりTPUの台数とは、注文の数ではなく割り当ての数だ。Googleがいくら計画を積み上げても、TSMCの後工程が空かなければ製造できない。だからこそGoogleは、2028年分として300万台超をインテルの後工程に発注したとThe Informationが報じ、富邦は同年に第9世代を1,200万〜1,500万台という数字を出す。台数の議論は、いつのまにかパッケージング工場の床面積の議論になっている。

投資家として押さえるべきなのは、この台数がどこへ動いても、ウェハと後工程の請求書は同じ場所に届くという点だ。増えれば増える、減っても前工程は先に埋まっている。台数予測が倍の幅で揺れるほど、その揺れの外側にいる企業の相対的な価値は上がる。

TPUが原価から売上に変わった四半期

アルファベット側にとって、今年の変化は台数ではなく計上区分にある。7月22日発表の2026年第2四半期で、Google Cloudは初めてTPUシステムの外部販売を売上として認識した。クラウド売上は248億ドル・前年同期比82%増、営業利益は88億ドル、営業利益率35.6%。受注残は5,140億ドルに積み上がっている。

CFOのアナット・アシュケナージは、今年中に認識するのは既存契約のごく一部で、大半は2027年になると説明した。供給が逼迫しているため第3四半期は外部の計算資源を借りて橋渡しするとも述べている。つまり2027年は、TPUの台数が自社のコストではなく他社への請求書に変わる比率が上がる年になる。サンダー・ピチャイが決算電話会議で語った配分の優先順位——まず最先端モデルの開発、次にクラウド顧客、そして自社サービス——は、裏を返せば売れる台数がまだ余っていないという告白でもある。

数字の重心はここにある。全社売上は1,198億ドル・24%増、検索は633億ドル・17%増、YouTube広告は111億ドル・13%増。売ると決めた条件のうち、検索売上の減少もクラウド成長15%割れも、現時点では視界にすら入っていない。

マーベルへの発注が、自分の書いた条件に刺さる

8月19日、マーベルがGoogleとの拡大契約を開示した。7月29日付の契約で、AI推論アクセラレータ、ストレージ/ネットワーク/メモリの各種コントローラ、ニアメモリ演算まで、TPUの周辺を広く覆う。同時にマーベルはGoogleに5,897万株・行使価格206.58ドルの新株予約権を発行した。満額で約122億ドル、Googleはマーベルの第5位株主に相当する規模になる。

面白いのは権利確定の条件だ。大半の株式は時間では確定しない。Googleがマーベルから買う特定製品の売上が5億ドル積み上がるごとに1トランシェ、それが240回。掛け算すると1,200億ドルになる。買った分だけ持ち分が増える設計で、測定期間は2026年8月1日から始まっている。

これは同じポートフォリオの中で二つの向きに効く。GoogleにとってはASICの調達先が増え、単価交渉のカードが増える話だ。一方でブロードコムについて私が書いた売却条件は「主要顧客の内製設計移行」であり、いま実際に起きているのは内製化ではなく外部ベンダーの分散である。文言が現実を捉えていない。モーニングスターのウィリアム・カーウィンが、ブロードコムの置き換えではなくGoogleの発注総額そのものの拡大だと読んだのは妥当だと思う。だが売却条件は「妥当な解釈」で運用するものではない。判定できる文にしておかなければ意味がない。この修正は10月末に持ち越す。株価が動いた週に条件の文言を書き換えるのは、条件を持っている意味を自分で消す行為だ。

四半期フリーキャッシュフロー、マイナス59億ドル

そして第2四半期、設備投資は449億ドルと前年同期の倍になり、営業キャッシュフロー391億ドルを上回った。フリーキャッシュフローはマイナス59億ドル。2四半期前は約プラス245億ドルだった。6月には株式発行で496億ドル、社債で203億ドルを調達している。通期の設備投資見通しは1,950億〜2,050億ドルへ引き上げられ、2027年はさらに大きく増えると明言された。株価は決算後に4%超下げ、8月24日の終値は344.82ドル、時価総額は約4.14兆ドルである(CNBC、8月24日時点)。5月18日につけた52週高値408.61ドルからは約16%下にいる。

ここで自分の甘さを書いておく。私がGOOGLに設定した三つ目の売却条件は「2027年以降もフリーキャッシュフローのマイナスが続く」だが、何四半期続いたら発火するのか、単四半期で見るのか12カ月累計で見るのかを決めていない。直近12カ月の累計はまだ約530億ドルのプラスで、現金・有価証券も約2,400億ドルある。だから今は判定に困らない。困らないうちは、条件が壊れていることに気づかない。四半期ベースなら第2四半期でとっくに触れている条件が、累計ベースなら何も起きていないことになる——この二つを決めていない条件は、都合のいいほうを後から選べてしまう。

台数の予測が倍の幅で揺れるのは、まだ誰も答えを持っていないからだ。持っていないものを当てにいくより、届く請求書のほうを数えていたい。次に見るのは10月の第3四半期決算、TPUシステム売上の立ち上がりと、キャッシュフローが第2四半期からどちらへ振れたかの2点になる。