BULL ウィーブル 2026年Q2決算|口座は8%しか増えていない
ウィーブルの2026年Q2は収益198.8百万ドル・前年比51%増の過去最高。だが株式出来高が73%増えた四半期に、ファンデッド口座は8%しか増えていない。PDT規則撤廃という一回性の追い風が、どこまで来期以降に残るかを分解した。
25年そこにあった壁が、6月4日に消えた。壁が消えた最初の四半期の数字を、来年の実力として読んでいいのか。
2001年、ドットコム相場の残骸の上に一本の線が引かれた。信用取引口座で5営業日に4回以上のデイトレードをする者は、常に25,000ドルの余力を持て——当時のNASDが、焼け跡から出てきた個人投資家の損失を見て設けた規則である。以後25年、この金額は一度もインフレ調整されなかった。手数料はゼロになり、端株が買えるようになり、リスク監視は秒単位になったのに、25,000ドルだけが2001年のまま残った。
その線が今年、消えた。
2001年の25,000ドル規則が消えた6月4日
SECは2026年4月14日にFINRA規則4210の改正を承認し、FINRAは4月20日の通知でその施行日を6月4日と定めた。デイトレード回数のカウント、「パターン・デイトレーダー」という区分そのもの、そして25,000ドルの最低必要額——この三つが引き下げではなく、まるごと廃止された。代わりに置かれたのは、取引回数ではなく実際のポジション残高に応じた日中証拠金の枠組みである。移行には2027年10月20日までの猶予があるため、対応の速さは証券会社によって違う。
ウィーブルの顧客一人あたりの平均預り資産は5,000ドルを下回る。つまり同社の顧客の相当部分は、この25年間、規則の向こう側に立たされていた人たちだった。米国CEOのアンソニー・デニアは5月の時点で、規則の撤廃は取引活動を少なくとも2割は押し上げるだろう、ただし6月4日当日に起きる話ではない、という趣旨を語っていた。
結果は、当日から起きた。
出来高73%増、ファンデッド口座8%増
2026年Q2の数字を並べる。
- 収益 198.8百万ドル(前年比+51%、前四半期比+24%)
- 取引関連収益 147.7百万ドル(+66%)
- 調整後営業利益 62.6百万ドル(+169%、マージン31.5%)
- 純利益 24.4百万ドル(前年同期は損失)
- 顧客資産 285億ドル(+79%)
- 株式想定出来高 2,790億ドル(+73%)/オプション 2億1,300万契約(+68%)
- 登録ユーザー 2,820万人(+13%)/ファンデッド口座 513万(+8%)
最後の一行が、この四半期の性格を決めている。出来高は73%増えた。だが実際に金を入れて取引している口座は8%しか増えていない。増えたのは客の数ではなく、同じ客の回転数だ。
「回転数の増収」は、証券業でいちばん平均回帰しやすい種類の増収である。相場が荒れれば伸び、退屈になれば縮む。ビットコインが6%上がった日にこの株が上がるのは偶然ではなく、収益の74%が取引関連であることの当然の帰結だ。四半期の営業レバレッジは本物だが、レバレッジの効き先が回転数であれば、下り坂でも同じ倍率で効く。
規制緩和は誰かの独占になるか
ここが、この決算をどう読むかの分岐点だと思っている。
25,000ドルの壁が消えたことは、ウィーブルにとって間違いなく追い風だった。だが同じ扉は、ロビンフッドにも、インタラクティブ・ブローカーズにも、シュワブにも、まったく同じ角度で開いている。規則を書き換えたのはFINRAであって、ウィーブルではない。
企業を見るとき、私は「通行料を取る側にいるか、払う側にいるか」をまず見る。誰かが成長したときに、その成長分の一部が構造的に自分の口座へ落ちてくる位置にいるか、という問いだ。規制緩和で開いた市場は、この意味での位置を誰にも与えない。全員の前で同時に扉が開くからで、開いた扉は独占できない。追い風と優位は別のものだ。前者は誰にでも吹き、後者は一社にしか吹かない。
だからこの数字は、業界の水位が上がったことの証明ではあっても、ウィーブルがその水の中で他社より高い場所を確保したことの証明にはならない。それを確かめられる指標は、出来高ではなく口座数のほうにある。そして口座数は8%だった。
見方が外れるとしたら、どこからか
自分の読みが間違っている可能性は三つある。
一つ目。顧客資産の79%増は、回転数だけでは説明できない。金が入ってきている。純入金が伸び、資産残高が積み上がれば、金利収入という取引量に依存しない収益が育つ。二つ目。18市場・約81万の海外ファンデッド口座、タイのPi Securities買収、そして2026年4月にFINRAがウィーブルの米国法人をクリアリングブローカーとして承認したことで動き出した機関投資家向け事業——いずれも、リテールの気分から距離を取るための手が実際に打たれている。三つ目、そして最も単純な可能性として、PDT撤廃が活動水準そのものを恒久的に一段引き上げたのなら、私が「一回性」と呼んでいるものは実は新しい床である。
だから、見方を変える条件を先に決めておく。ファンデッド口座数の前年比が25%以上で2四半期続くこと。PDT撤廃から4四半期が過ぎた2027年6月期にも、四半期収益が198.8百万ドルを上回っていること。そして取引に依存しない収益が、比率ではなく金額として2四半期連続で増えること。
三つ目を比率で測らないのは意図的だ。取引収益が落ちれば非取引収益の比率は自動的に上がる。つまり比率で条件を書くと、二つ目の条件を外したときに三つ目が勝手に満たされてしまう。互いに逆を向く指標を二つ並べて「両方満たせば合格」と書いてしまう間違いは、以前も一度やった。
12の枠には、今回は入れていない。理由は株価ではなく、口座数のほうだ。8/19の終値は8.64ドル、決算後の時間外では9.91ドルまで買われたが、その9.91ドルが高いか安いかは、この判断に関係がない。
25年ぶりに壁が消えた四半期に、新しく金を入れた人は8%しか増えなかった。壁の向こうにいたのは、思っていたより少人数だったのかもしれない。