MSFT マイクロソフト|43%と、マイナス23%
Azureは43%成長で年間売上1000億ドルを初めて超えた。同じ年にフリーキャッシュフローは23%減っている。需要を作る側の持ち場に入る資格は、作った需要の代金を自分の稼ぎで払えることにある。10月30日の判定で見る数字を、成長率から現金の出入りへ移す。
需要を作る側の持ち場に入る資格は、需要を作ることではない。作った需要の代金を、自分の稼ぎから払えることだ。
43%と、マイナス23%。同じ会社の、同じ年の数字である。前者はAzureの成長率、後者はフリーキャッシュフローの増減だ。マイクロソフトをどう見るかは、このどちらを主語に置くかで変わる。
このポートフォリオでマイクロソフトは、需要を作る側の控えに置いている。同じ棚にいるのはアルファベットとエヌビディアだ。自分でAIインフラに巨額を投じながら、その原資を自分の稼ぎから出せる会社——という役割で括った持ち場で、比較の相手はアルファベットになる。
Azureは43%、年間1000億ドルを初めて超えた
7月29日に出た6月期決算は強かった。四半期の売上は900億ドルで18%増、GAAP純利益は358億ドルで31%増、希薄化後EPSは4.81ドル。非GAAPのEPSは4.74ドルで、市場予想の4.24ドルを大きく超えた。
中心はAzureである。成長率は前四半期の40%から43%へ加速し、年間売上は初めて1000億ドルを超えた(前年比41%増)。インテリジェントクラウド部門は393.1億ドルで31.6%増。CFOのエイミー・フッドは、次の四半期のAzure成長を為替中立で45%と見込むと述べている。市場予想は41.4%前後だった(CNBC、7月29日)。
弱い部分もある。パーソナルコンピューティング部門は128.5億ドルで4.4%減。WindowsのOEMライセンスが7%、Xboxのコンテンツ・サービスが10%落ちている。ただし全体に占める比率は小さく、この決算の主題ではない。
同じ年に、現金は23%減っている
2026年6月期のフリーキャッシュフローは前年比23%減った。同じ年に有形固定資産への投資は約1160億ドルという過去最高になっている。第4四半期単体では358億ドルで、市場予想の361.4億ドルをわずかに下回った。フッドは暦年2026年の設備投資見通しを約1900億ドルとしており、うち約250億ドルは部品価格の上昇によるものだと説明している(FY26 Q3決算説明会)。
稼ぎは伸びている。伸びを上回る速さで、先に金を置いている。しかも支出の多くは寿命の短い資産、つまり数年で償却が始まるハードウェアだ。稼働率が高いままなら正解になり、需要が想定より早く頭打ちになれば償却だけが残る。
この会社の評価が割れるのは、業績が読みにくいからではない。二つの数字が逆を向いているからだ。
成長率だけを見れば加速している。現金だけを見れば細っている。どちらも本当のことで、片方を選んだ時点で結論はほぼ決まる。
成長率は、この持ち場への適性を測らない
繰り上げの条件として、当初はAzureの成長率が35%を超えることを挙げていた。
この線はいま、判定に何も足さない。すでに43%出ていて、会社自身が次を45%と案内している。条件は、満たすか満たさないかで判断が分かれるから条件なのであって、ほぼ確実に満たされる水準を置いても判断は動かない。
もっと言えば、測っている対象がずれている。Azureの成長率は事業の好調さを示す指標であって、この会社がこの持ち場に合うかどうかを示す指標ではない。ここで問うべきは「AIへの投資を自分の稼ぎで賄えているか」であり、成長率はその答えにならない。事業が好調なほど設備投資が増え、賄いにくくなることさえある。
適性を測るなら、材料はもう出ている。フリーキャッシュフローと、営業キャッシュフローに対する設備投資の比率だ。この線なら、満たす年と満たさない年が現実に分かれる。10月30日に見るのはこの2つにする。
397ドルが495ドルになった16日間
もう一つ、正直に置いておくべき事実がある。
7月29日の決算前、株価は397.24ドルだった。年初来では2割近く下げていた。8月14日には約495ドルで、52週レンジは349.20〜553.72ドルである(Robinhood、8月14日)。決算をまたいで2割以上戻したことになる。
つまり、いま検討している候補は、条件を見に行く前にもう上がっている。下げている保有銘柄を売って、上がった候補に乗り換える——このポートフォリオが最も避けたい動き方の見本のような形だ。入れ替えを四半期に一度の日にだけ許しているのは、まさにこれを防ぐためである。
上がったから買わない、という理屈は持っていない。値段が動いたことは判断を変える理由にならない、と決めているからだ。ただし値段が動いた直後は、自分の判断が汚れやすい時期でもある。だから日付を待つ。
10月30日に決めること
決めるのは3つだ。マイクロソフトを需要を作る側の候補として正式に置くか。置くとして、比較相手をアルファベットにしたとき、収益の出どころが違うだけで役割の重なる2社を同じ棚に並べる意味があるか。そして電力の持ち場を14%から7%へ減らすかどうかを、入れ替えとは切り離した独立の議題として審議するか。
3つ目を分けるのには理由がある。銘柄を1つ出して1つ入れるのと、持ち場そのものの配分を動かすのは、別の決定だからだ。前者は同じ棚の中の比較で済むが、後者はポートフォリオ全体の考え方に触れる。同じ日に決めるとしても、同じ議題として扱うことはしない。
繰り上げの条件も、成長率から現金の出入りへ書き換える。ただし条件の改訂は四半期の見直しでしか行わないと決めているので、正式な差し替えはその日まで動かさない。
伸びている数字と、減っている数字が、同じ決算に並んでいる。どちらを条件に選ぶかが、この会社を持つかどうかより先に来る問いだ。