客が育つほど、dLocalの取り分は減る
顧客が売上を伸ばすと、dLocalの取り分は下がる。比喩ではなく、契約にそう書いてある。8月13日の引け後に出た第2四半期決算は、その設計が数字の形で表に出た四半期だった。
上の2行だけが、引き上げられた
決済総額の見通しは前年比50〜60%から60〜70%へ。粗利は22.5〜27.5%から25〜30%へ。営業利益は27.5〜32.5%のまま動かなかった。量の見通しを10ポイント上げて、利益の見通しを据え置く。会社自身が、増えた分は下まで来ないと言っている。
92、56、29、15
四半期の実績を上から順に並べると、その理由が形になって出てくる。
決済総額は177億ドルで前年同期比92%増、前年は92億ドル。売上は3億9,970万ドルで56%増。粗利は1億2,720万ドルで29%増、過去最高。営業利益は6,420万ドルで15%増。純利益は5,480万ドル、希薄化EPSは0.18ドルで、市場予想の0.19ドルには届かなかった。
92、56、29、15。損益計算書を一段下りるたびに、成長率がおよそ半分になる。粗利率は前年同期の39%から32%へ、前四半期の35%からも落ちた。決済総額1ドルあたりに残る粗利は、1.07%から0.72%になっている。
上の数字が派手であるほど、下まで下りたときの目減りが目立つ。
値下げは、契約書に書いてある
なぜ落ちたのか。同社は理由をかなり具体的に書いている。
メキシコで、Tier 0と呼ばれる最大手のマーチャントが、より高い取扱高レンジの価格帯に到達した。取扱量が閾値を超えたので、単価が下の段に移った、ということである。加えてアフリカ・アジアでは、為替スプレッドの厚いモザンビークやベトナムからの寄与が減り、ナイジェリアで一時的な費用が出た。相殺する側では、ブラジルのライドヘイリングと旅行系の立ち上がり、アルゼンチンの前払コスト低下が効いた。
ここで効いているのは、競争でも構成変化でもない。契約である。顧客が大きくなるほど単価が下がるように、あらかじめ書いてある。【数量割引という設計】と呼ぶことにする。
私が12銘柄を選ぶときの唯一の関門は、誰が勝っても通行料が入る場所かどうか、という点にある。そして関所であることの証拠は、成長率ではなく単価の向きに出る。台湾積体電路製造では、微細化が一段進むごとにウェハの単価が上がる。最大の顧客が、最も新しい工程で、最も高い値段を払う。dLocalの契約は逆を向いている。最大の顧客が最も安い。
昨日も、同じ結論を書いた
正直に書いておくと、私は昨日もこれとほとんど同じ話を書いた。Figure Technology Solutionsの取扱高が132%増えた四半期に、ネットテイクレートが4.0%から3.6%へ下がった、という話である。
二日続けて同じ結論に着地するとき、疑うべきなのは会社ではなく自分の型のほうだ。「取扱量が増えて単価が落ちた、ゆえに関所ではない」という一文は、決済系の成長企業のほぼ全部に貼れてしまう。貼れてしまうものは、判定に使えない。
違いを探して、一つ見つかった。Figureのときは、単価の低下が資本を使わない経路への構成変化なのか競争で削られたのかを、開示から判定できないと書いた。判定できないから保留にした。dLocalは判定できる。会社が理由を書いていて、それが数量価格レンジという契約条件だからだ。
結論が同じでも、辿り着く速さは違う。分からないから待つのと、書いてあるから決まるのとは、別の状態である。
安い株ではある
反対側も置いておく。
粗利の絶対額は過去最高で、通期の粗利成長ガイダンスはむしろ上がった。料率が下がりながら額が増える商売は、それ自体では悪くない。営業利益を粗利で割った比率は前四半期の44%から50%へ6ポイント改善した。調整後フリーキャッシュフローは6,900万ドルで41%増、純利益に対する転換率は125%。3億ドルの自社株買いは進行中で、配当も出ている。1億5,000万ドルのクレジットファシリティも新たに組んだ。時価総額は43億ドル前後で、Simply Wall Stの集計では予想利益ベースのPERは17倍程度。52週の高値は16.78ドル、安値は10.64ドルで、株価は今その真ん中より少し上にいる。決算後の時間外は2.3%安と、静かな反応だった。
高い値段がついているとは言えない。5月の第1四半期決算では、費用増と一過性の税金でこの株は2割近く下げている。悲観はすでに一度織り込まれた後だ。
一つだけ引っかかるのは、「2026年下期には営業レバレッジが改善する」という文言が、第1四半期の発表資料にも同じように書かれていたことである。同じ約束が二期続き、締め切りだけが一期分近づいた。
11月に見る一行
このポートフォリオでは、棄却した理由そのものが消えたかどうかしか、再評価の条件に書かないことにしている。業績が良くなったから見直す、では条件にならない。
だからdLocalの条件は二つだけになる。粗利をTPVで割った値の前年同期比での低下が、2四半期連続で止まること。そして営業利益の成長率が粗利の成長率を上回ること。前者は契約が下向きに効き続けていないことの確認で、後者は二期続いた約束が実行されたことの確認である。次の判定は第3四半期決算、11月中旬になる。
それまで、この銘柄について私は何も言わない。
関所の契約書に「通る人が増えたら料金を下げます」と書いてあるなら、それは関所ではなく量販店だ。量販店を持ってはいけない理由はない。ただ、量販店を関所の値段で買う理由もない。