HACK TO THE FUTURE

実験記録12銘柄記事13本配分は2026-08-11時点

AMAT

AMAT アプライド 2026年Q3決算|13期続いた粗利率上昇

アプライド・マテリアルズの2026年8月期Q3決算を分解した。過去最高でも株が売られた理由は利益率ではなく値段であり、13四半期続く粗利率の上昇こそが同社の価格決定力を示す実測値だと読んだ。

過去最高を並べた決算で、株は売られた。理由を利益率に求める説明が並んだが、数字を割り戻すと合わない。

売上91.2億ドル、前年同期比25%増。前四半期比では15%増で、四半期ごとの伸びとしては創業以来もっとも大きいという(8月13日、会社リリース)。調整後EPSは3.50ドルで41%増。営業キャッシュフロー30.4億ドルも過去最高。次の四半期の見通しは売上102.5億ドル±5億ドルで、市場予想の95.4億ドルを大きく上回った。

それでも時間外の株価は4.94%下げ、508.15ドルになった(Investing.com、8月13日)。

過去最高の四半期に、なぜ5%売られたのか

出回った説明は「粗利率の見通しが弱い」だった。第4四半期の調整後粗利率ガイダンスは50.4%で、直前の四半期と同じ。13四半期続いた上昇がここで止まる、と。

ただ、これは割り戻すと合わない。第3四半期の調整後営業利益率は34.0%、粗利率が50.4%なので、営業費用は売上の16.4%、約15.0億ドルということになる。会社が示した第4四半期の営業費用は約15.8億ドル。売上102.5億ドルに対して15.4%だ。粗利率が横ばいでも、営業利益率は35%前後へ上がる計算になる。利益が薄くなる決算ではない。

では何が売られたのか。値段だろう。この株は52週で216%上がり(stockanalysis.com)、6月30日に739.67ドルの最高値をつけている。予想利益ベースのPERは8月9日時点で約31.9倍、過去10年の平均は19倍台だ(GuruFocus)。良い決算では足りない場所に立っていた。最高値からは3割ほど下にあるが、安いから下げたのではなく、高いところから下げている最中である。

13四半期続いた粗利率上昇が示すもの

この決算でいちばん重い数字は、売上でもEPSでもない。粗利率が13四半期連続で前年同期を上回った、という一行だ。

装置は本来、値崩れしやすい商売である。顧客は世界に十数社しかおらず、その一社一社が巨大で、買い手が強ければ値段は下がる。それが13四半期続けて上がっているということは、値札を書き換えられる側にいるということになる。半導体装置部門だけで見れば粗利率は55.4%で前年同期比プラス1.9ポイント、営業利益率は38.0%と前年の33.2%から大きく伸びた。

私はこの連載で、企業を「通行料を取る側」と「払う側」に分けて見ている。AIの覇者が誰になろうと、その手前に置かれていて料金を取れる位置にいるか、という判定だ。図に描けばどんな会社も料金所に見える。実際に徴収できているかどうかは、粗利率にしか出ない。13四半期という数字は、その意味で数少ない実測値である。

アプライドの通行料はASMLの独占とは違う

ただし、同じ「取る側」でも形が違う。

ASMLのEUV露光装置には代替がない。あれを通さなければ先端チップは作れない。一方、アプライドの成膜やエッチングには、ラムリサーチや東京エレクトロンという別の選択肢がある。単独の関門ではない。

では料金はどこから出ているのか。工程の本数である。ゲートオールアラウンド構造、HBM、先端パッケージ——AI向けのチップは、前の世代より作る手順が増える。手順が増えるほど、装置が挟まる回数が増える。会社は先端ロジック・DRAM・先端パッケージの三つが2026年と2027年の装置市場の成長の約8割を占めると説明し、先端パッケージの売上は暦年2026年に70%超伸びる見込みだとした(決算説明会、8月13日)。

料金所が一つ立っているのではなく、有料道路そのものが長くなっていく。独占ほど強くはないが、独占より広い。

中国比率28%の中身と、2億5,250万ドルの罰金

地味だが効く変化がもう一つある。中国向け売上の比率が、前年同期の35%から28%へ下がった。

ただし中身は見ておいたほうがいい。中国の売上額そのものは25.48億ドルから25.06億ドルへ、ほぼ横ばいである。比率が下がったのは分母が増えたからだ。同じ期間に米国向けは6.83億ドルから13.67億ドルへ倍増し、比率は9%から15%になっている(会社リリース、地域別売上)。

中国から降りたのではない。中国以外が伸びて、相対的に薄まった。依存度を下げるやり方としては痛みが少ない。裏を返せば、中国向けが規制で止まったときに消える25億ドルは、そのまま残っている。

この会社が中国売上をどう扱ってきたかの記録もある。2026年2月11日、米商務省産業安全保障局(BIS)との和解で、アプライドは約2億5,250万ドルを支払った。韓国子会社を経由し、エンティティリスト掲載のSMICへイオン注入装置を56回輸出したとされる件で、金額は法定上限、BIS史上2番目の高さだった。3年間の停止条件付き輸出禁止命令も付いている(BIS発表、2026年2月11日)。支払いは第2四半期に完了済みだ。

この見立てが外れるとしたら

装置は循環する商売だ。会社は顧客から8四半期分のローリング予測を受け取り、2030年までのコミットメントもあると言うが、予測は注文ではない。データセンター投資が減速すれば、真っ先に止まるのが装置の発注である。そのとき粗利率の連勝も終わる。

私は12銘柄の枠を固定して運用している。増やすほど一社への理解が薄くなるからで、入れ替えは四半期に一度だけと決めてある。アプライドは今その枠の中にいない。似た位置にASMLがいて、同じ設備投資の波を受ける以上、両方持つのは分散ではなく二重取りになる。この論点は次の見直しまで持ち越す。

粗利率が14期目も上がったのかどうか。答えは11月中旬の決算に出る。