META(メタ)の28%成長|なぜ株主に届かなかったのか
METAの5年株価CAGRは8.34%でS&P500の11.87%に約20ポイント劣後する一方、直近四半期の売上は28%増えた。速さが株主に届かない理由を、設備投資311億ドルとアジュール経由のAIトークン購入という二つの支出から読む。
5年で年率8.3%、同じ期間のS&P500は11.9%。Mag7で最速級に伸びている会社が、指数に負け続けている。
こういう見方が市場に流れている。メタはエヌビディアを除けばMag7で最も速く成長しているのに、過去5年のリターンは7社で最悪で、S&P500に20%近く負けている。だから今が、後から振り返って最良の買い場だったと言われる時期になるのではないか——。
前半は確かめる価値がある。確かめてから、後半を考えたい。
5年で年率8.34%、S&P500は11.87%
financechartsの集計(2026年8月時点)では、METAの5年株価CAGRは8.34%、トータルリターンベースでも8.53%。同じサイトのSPY(S&P500連動ETF)の5年株価CAGRは11.87%だ。直近12カ月に限れば、METAは-22.79%。
年率3.5ポイントの差を5年積み上げると、累計では21ポイント前後の開きになる。「S&P500に20%近く負けている」という指摘は、数字のとおりだった。
成長のほうも事実に近い。7月29日に出た4-6月期の売上は前年同期比28%増。この規模の会社としては異例に速い。指摘の通り、成長が足りないから負けたのではない。
では、その速さはどこへ行ったのか。
売上608億ドルと、フリーキャッシュフロー7億8,400万ドル
4-6月期の決算は、上半分と下半分でまったく違う話をしていた。
上半分。総売上608億ドル、28%増(為替一定ベース27%増)。うち広告売上594億ドル、27%増。広告エンジンは減速していない。むしろ加速している。
下半分。総費用420億ドル、55%増。増加の要因として会社が挙げたのは、人件費、インフラ費用、訴訟関連費用、そして「第三者AIトークン費用」だった。GAAP営業利益は188億ドル、8%減。営業利益率31%。四半期の設備投資は311億ドルに達し、営業キャッシュフローをほぼ食い尽くした結果、フリーキャッシュフローは7億8,400万ドルまで縮んだ。EPSは6.18ドルで、市場予想の7.22ドルを外した。
通期の設備投資見通しは1,300〜1,450億ドル。従来の1,250〜1,450億ドルから、上限は据え置きで下限だけが50億ドル上がった。2027年の数字は出していないが、来年も能力を最大化すると言っている。発表直後、株価は時間外で8〜10%下げた。
売れていないから下がったのではない。売れているのに現金が残らないから下がった。5年間の劣後の正体も、突き詰めればこの一点に集約されていく。伸びた売上が、株主の手前で誰かに渡っている。
PER19倍は本当に安いのか
8月21日時点で株価549.32ドル、時価総額1.40兆ドル、実績PER19.02倍、予想PER18.06倍。52週高値は2025年9月19日の790.80ドル、安値は2026年3月27日の520.26ドル。高値からは3割落ちている(CNBC)。
メガキャップの中では、明らかに安く見える。問題は、この「E」がまだ何も背負っていないことだ。
年間1,300〜1,450億ドルの設備投資は、支出した瞬間には利益を減らさない。減価償却として、数年かけて分割で利益を削りに来る。19倍に見えている分母は、これから来る償却の波を一度も浴びていない分母である。加えて税率も、残り四半期は13〜16%から15〜17%へ引き上げられる見通しだと会社が言っている。
反対側の材料も置いておく。24億ドルの訴訟関連引当と約12億ドルの退職費用(5月の人員削減に伴うもの)を除けば、営業利益は8%減ではなく9%増だった、というのが会社側の計算だ。一過性の費用を除いた実力値は伸びている。stockanalysisが集計する62人のアナリストの平均目標株価は754.14ドルで、レーティングは強気寄り。BNPは855ドルを置いている(いずれも8/21時点)。19倍を「安い」と読む人のほうが、いまは多数派だ。
「知能を売る」と言った会社が、なぜトークンを買っているのか
決算説明会でザッカーバーグは、計算資源そのものを売るより知能を売るほうが利益率はずっと高い、という趣旨のことを述べた。1,450億ドルが何を買うための金なのかについての、これまでで最も明確な説明だった。
その三週間後、ブルームバーグが報じた。メタはマイクロソフトの最大級のAI顧客の一社になっている。Foundry経由で年間数億ドル規模を支払い、週あたり数兆トークンを消費している。関係者一人の証言に基づく報道で、両社ともコメントを拒んでいる(8月20日)。年5億ドルと仮定しても設備投資の0.4%程度にすぎず、金額そのものは小さい。効くのは金額ではなく、座っている位置のほうだ。
構図を並べてみる。8月10日、メタは300億パラメータのMuse GlimmerをApache 2.0でオープンウェイト公開した。ノートPCの単体GPUで動くよう4ビットまで圧縮したモデルを、誰でも無償で使えるようにした。最上位のMuse Spark 1.2の重みも近く出すと表明している。その一方で、自社が使うモデルの一部は他社のクラウドから買っている。
知能は配られ、計算資源には請求書が付いている。ザッカーバーグの言葉が正しいなら、利益率の高い側を無償で手放し、低い側で買い手に回っていることになる。
Muse Glimmerが出た日に、私はこの会社を「通行料を払う側」と判断した。値段が高いからでも、事業が弱いからでもない。AIの取引において、料金所のこちら側ではなく向こう側に立っているからだ。二週間後のブルームバーグ報道は、その判断を補強する材料になった。
時価総額1.40兆ドルの会社に、1.4兆ドルの請求
8月18日、オークランドの連邦地裁で、子どもの安全をめぐる裁判が始まった。原告はカリフォルニア、コロラド、ケンタッキー、ニュージャージーの4州。残り25州の裁判は後日とされている。
理論上の制裁金の上限は約1.4兆ドル。メタの株式時価総額とほぼ同額だ。この数字はメタ側が法廷文書で示したもので、州側は非現実的に見せるための引用だと反発し、より現実的な水準として2,000億ドルを判事に示している。8人の陪審は助言的な位置づけで、責任認定と救済の最終判断はイボンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事が下す。コーネル大のグリメルマン教授は、メタを破産させるような評決にはならないだろうと見ている。
だから1.4兆ドルという数字自体は、ほぼ演出だと思っていい。危ないのは金額ではない。
州側が問題にしているのは、無限スクロール、いいねボタン、写真フィルターといった、依存を強めるとされる機能の設計そのものだ。求めているのは賠償だけでなく、フェイスブックとインスタグラムの運営方法の変更である。制裁金は払える。エンゲージメント設計を変えろという命令は、594億ドルの広告売上が湧き出している場所そのものに触る。
前例は積み上がりつつある。ニューメキシコ州では消費者保護法違反が認定され、民事制裁金3億7,500万ドル。3月にはカリフォルニアの陪審がメタとアルファベットの責任を認め、補償的損害賠償300万ドルを評決した。金額はまだ小さい。だが法理が生き残れば、次の原告がそれを使う。4-6月期に計上された24億ドルの訴訟関連費用は、この列の先頭にすぎない。
この1,450億ドルは、誰の売上になるのか
設備投資は消えるのではない。移動する。
先端シリコンに、電力に、変電設備に、土地と建物に。メタの決算書で現金が消えた場所には、必ず対になる誰かの売上がある。アジュールへの支払いも同じことで、メタの費用行はマイクロソフトの売上行になっている。同じ四半期に、片方のAI支出はクラウド収益へ、もう片方のAI支出はキャッシュフローの穴へ変わった。
5年で年率8.34%という数字が言っているのは、この会社が遅いということではない。速く走った分の果実が、株主の手前で他人の売上に変換されてきたということだ。そしていま、その変換のペースは過去最大になっている。
私が持つ12銘柄にメタは入っていない。理由は19倍という値段ではないし、事業が壊れていると思っているからでもない。この会社が、AIという取引において料金を受け取る位置にいない、というただ一点だ。
判断が外れる条件も書いておく。1,450億ドルが広告の変換率改善という形で回収され、償却の波を浴びてなお営業利益が増え続けたとき。あるいは、メタが自前のクラウドを立ち上げて外部に売る側へ回ったとき——ブルームバーグの報道でも、その検討には触れられている。どちらかが起きれば、この判断は間違いになる。10月末まで動かさないが、間違っていたならそう書く。
ザッカーバーグは、計算資源を売るより知能を売るほうが利益率は高いと言った。いま無償で配られているのは知能のほうで、請求書が回っているのは計算資源のほうだ。そして、その請求書を書いているのはメタではない。