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実験記録12銘柄記事21本配分は2026-08-11時点

日本株で値上げが通る会社|味の素とレーザーテックを検討

太陽誘電の大量保有報告をきっかけに、日本株を入れ替え候補として検討した。値上げが通るかどうかだけを物差しにすると味の素とレーザーテックが残り、それでも12の枠を動かさない理由を書いた。

需要が過去最高でも、売る値段を下げる会社がある。追い風を受けているかどうかは、そこで分かれる。

8月12日、関東財務局に9件の報告書が同じ日にまとめて提出された。提出者はシチュエーショナル・アウェアネス。元OpenAIのレオポルド・アッシェンブレナーが立ち上げた、AIに賭けることだけを目的にしたファンドである。中身は日本の電子部品メーカー、太陽誘電株の売買記録だった。

6月29日に5.99%。7月22日までに16.61%。そして8月3日、市場外で10.81%分を処分し、4.41%まで落とした。買いも売りも終わったあとに、まとめて開示されたことになる。太陽誘電株はその日7.5%上げた。

SNSでは「レオポルドが入った」が話題になったが、報告書を時系列で並べれば、彼はもう出ている。しかも同ファンドはAI株の急落で株式の大部分をシタデルに売却した直後だ。買いも売りも、確信ではなく資金繰りに規定されていた可能性がある。

追随するかどうかは、ここでは本題ではない。問いは別にある。日本株は12の枠に入るのか。

太陽誘電の「販売価格下落189億円」

太陽誘電が5月8日に出した2027年3月期の計画は、売上3,840億円、営業利益300億円で50%増という強気の絵だった。ただし増減の内訳が普通ではない。販売数量の増加による稼働率改善が営業利益を329億円押し上げ、販売価格の下落が189億円の減益要因になる。

同じ日の決算説明会で、銀などの貴金属高騰について会社はこう答えている。現時点では原材料価格の上昇分を上回る値上げは考えていない、と。一方でAIサーバー向けのMLCCは今期後半から大きく変わり、来期以降は数量もかなり増えるとも言っている。

数量は増える。値段は下がる。8月5日に出た4〜6月期は売上939億円で10.7%増、営業利益48億円で53.3%増、営業利益率にすると5.1%。通期の純利益予想は290億円へ引き上げられた。決算としては良い。だが利益の出方は、AIの追い風を「通行料」として受け取っているのではなく、稼働率の改善として受け取っている。

需要が強いことと、値段を決められることは、まったく別の話だ。

値上げが通ったかは決算資料の増減分析に出る

見分ける方法は難しくない。会社が自分で出す営業利益の増減分析で、価格が増益要因の側に書かれているか、減益要因の側に書かれているか。それだけである。

料金所を持っている会社は、原材料が上がれば通行料を上げる。持っていない会社は、原材料が上がっても値段を上げられず、数量と稼働率で埋め合わせる。太陽誘電は後者だと自分で言っている。だからこの銘柄は候補から外した。株価が上がったからでも下がったからでもない。

この物差しを日本株全体に当ててみると、残る会社は驚くほど少ない。

味の素のABFが30%値上げを通告した

味の素のABF(味の素ビルドアップフィルム、CPUやGPUを載せる基板の絶縁材)は、世界シェアが95%以上とされる。出典によって80〜90%からほぼ100%まで幅があるが、実質的な代替供給者が存在しない点は共通している。

2026年に台湾の業界メディアが報じたのは、味の素が主力製品を30%値上げし、新価格を第3四半期から適用するという内容だった。欣興電子や景碩科技といった基板メーカーが、正式な通知を受け取ったことを認めている。事実なら、日本株でこれほど明確に値上げを実行した例はほかにない。

アクティビストのパリサー・キャピタルが3月の提案書で指摘した論点が、値上げの根拠を言い当てている。ABFがNVIDIAのBlackwell GPUの販売価格に占める割合は0.1%未満だ。買う側にとって、この材料の値段が3割上がっても、完成品の原価はほとんど動かない。だから通る。

ただし、ここには正直に書いておくべき弱点が三つある。

第一に、30%値上げは味の素自身の発表ではない。6月のウォール・ストリート・ジャーナルの記事で藤江太郎社長は、値上げではなく増産で応える方針を述べている。2032年稼働の第3工場がその答えだという。報道と経営者の言葉が食い違っている以上、値上げが全面的に、かつ持続的に通ったと決めつけることはできない。

第二に、ABFは会社全体の一部でしかない。2026年3月期の全社営業利益1,811億円のうち、機能性材料は約546億円で35%増。電子材料の売上は約1,007億円だった。残りは調味料と冷凍食品とアミノ酸である。AIの料金所を買っているつもりが、七割は食品を買っていることになる。パリサーが要求しているのは、まさにこの部分を独立したセグメントとして開示させることだ。

第三に、株価5,202円、時価総額約5.09兆円、予想PER40.3倍(いずれも8月7日時点)。食品会社の値段ではない。

レーザーテックの営業利益率45.7%が守ったもの

8月6日に出たレーザーテックの2026年6月期は、売上2,304.85億円で8.3%の減収、営業利益1,052.59億円で14.3%の減益だった。数字だけ見れば悪い決算だ。翌日の株価は13.55%下げて37,460円になった。

しかし営業利益率は45.7%を保っている。減益の理由は前期受注の反動と検収の時期であって、値段を下げたからではない。EUVマスクブランクスの検査装置は2000年代初頭から世界シェア100%を維持している。13.5nmの光をそのまま使って欠陥を見つける装置を、ほかに作れる会社がない。KLAが追っているが製品化は遅れており、業界では少なくとも2027年までは独占が続くという見方が優勢だ。

2027年6月期の会社計画は売上2,900億円、営業利益1,250億円で、受注は3,000億円から4,000億円と過去最高を視野に入れている。

反対材料も同じ強さで書いておく。この会社の四半期はジェットコースターのように動く。受注と検収のタイミングだけで一四半期の顔つきが変わり、実際に今期は減収減益で着地した。顧客はマスクショップと数社のファウンドリに極端に集中している。そして予想PERは55倍から62倍、PBRは13倍台(8月7日時点)。独占の値段としても、すでに高い。

ディスコの利益率は38.3%から42.9%へ

もう一社、値上げが数字に出ている会社がある。ディスコの4〜6月期(7月23日発表)は、売上1,143億円で27.1%増、営業利益490億円で42.2%増。営業利益率は前年同期の38.3%から42.9%へ上がった。売上より利益が速く伸びている。

ダイシングソーの世界シェアは7割から8割、グラインダも6割から7割とされる。装置と消耗品とサービスをまとめて売る型なので、他社に替えるコストが高い。HBMや先端パッケージの薄化と切断は、後工程で最も詰まりやすい場所でもある。

弱点は二番手が実在することだ。東京精密のシェアは1割弱で差は大きいが、独占ではない。そして決算の翌日に12%下げるような値動きをする。

東京エレクトロンとアドバンテストをなぜ外したか

料金所の純度だけを見るなら、この二社は上位に来る。東京エレクトロンのコータ・デベロッパは世界シェア91%、EUV露光用のトラックに至っては100%だ。アドバンテストのSoCテスタは66%で、前年の56%から上がっている。

それでも外した理由は違う。

東京エレクトロンは、すでに持っているASMLとほとんど同じ波に乗る。露光の周辺で稼ぐ会社を、露光そのものを握る会社の隣に置けば、二つの銘柄で同じ一つの賭けを二度することになる。分散のつもりが集中になる。加えて4月30日の決算説明で、会社はインフレと為替と固定費増によりマージンは依然として厳しいと述べている。

アドバンテストは、4〜6月期の営業利益率51.7%という過去最高を出した。ただし会社の説明は、製品構成と数量と規模、そして1ドル159円という為替である。前年より13円の円安だ。価格転嫁については案件ごと、顧客ごとと答えている。高収益であることと、値上げが通ることは、ここでも別だった。

それでも12の枠を動かさない

三つ理由がある。

重複がまず大きい。レーザーテックもディスコも東京エレクトロンもアドバンテストも、結局はAI向け半導体の設備投資という一本の波に乗る。ASMLをすでに持っている以上、そこに日本の装置株を足しても、持ち場が増えるのではなく厚みが増すだけだ。枠を12に固定しているのは、増やすほど一社ごとの理解が薄まるからで、同じ理由で似た銘柄を並べる意味もない。

値段が次に来る。装置株の予想PERは50倍から60倍の水準にある。前提が壊れていないのに下げた銘柄は買い場だと考えているが、いまの日本の装置株は下げていない。

三つ目は円だ。円建ての資産をドル建ての成績で測る以上、円安が進めば持ち分は目減りする。アドバンテストの高マージンの一部が円安由来であることは、裏返せば円が戻ったときに二重に効くということでもある。

そのうえで、いま一社だけ試すなら味の素だと考えている。装置株と違って設備投資の波とは別の足で立っており、持っている12銘柄のどれとも重ならない。外れる条件も先に決めておく。30%の値上げが実際には撤回あるいは縮小されたと確認されたとき、または機能性材料の利益が2四半期続けて前年を割ったとき。そのどちらかが起きれば、この候補は消える。

入れ替えを実際に動かすのは10月30日だ。それまでこの判断は動かさない。

太陽誘電の株価は8月12日に7.5%上げた。買った人が誰かはその日に分かり、その人がもう売っていたことも同じ日に分かった。値段を決められるのは誰なのかという問いだけが、開示のあとに残る。