その関所は、需要が引いた四半期に通行料を取れなかった
7月14日に出たAehr Test Systemsのプレスリリースの見出しはこうだった。「世界のEVプログラムが加速するなか、800万ドル超のシリコンカーバイド向けウェハレベル・バーンイン新規受注を獲得」。主力のSiC量産顧客からの追加発注と、世界最大級の自動車メーカーからの直接発注が含まれる、とある。
同じ日、同じ会社が決算も発表している。そちらを開くと、シリコンカーバイドは2026年5月期の売上の5%未満だった。2年前は95%超だったものが、である。見出しが指している事業は、もうこの会社の本体ではない。
実際に伸びているのは別の場所だ。第4四半期はAIプロセッサとシリコンフォトニクスのバーンインが売上の80%超を占め、前年同期の56%から一気に入れ替わった。四半期受注は6,070万ドルで過去最高、期末の実効バックログは1億60万ドル。会社は2027年5月期の売上を1億3,000万〜1億5,000万ドル、前年比160〜200%増と見込んでいる。株価は8月12日に131ドル台で最高値を更新し、1年で約5倍になった。
図に描くとASMLと同じ形になる
このポートフォリオは「誰が勝っても通行料が入る場所」を軸に組んである。AEHRはその形をしている。フルウェハのバーンインは、どのAIチップが勝っても通る工程だ。配置図に落とせば、ASMLやEDAと同じ場所に置ける。
だが形が同じでも中身が同じとは限らない。関所かどうかを決めるのは配置図ではなく、【徴収実績】だと考えている。需要が引いたときに、それでも通行料を取れたか。
AEHRにはその四半期がすでに一度来ている。2026年5月期の通期売上は5,000万ドル、前年比マイナス15%。非GAAP粗利率は44%から38.5%に下がった。この間、SiCのEV市場は世界的に減速していた。つまり関所は迂回された。EVが減れば通行料も減る場所だった、ということだ。
ASMLとの差はここにある。ASMLの関所を守っているのは物理と数十年かけて積み上げたサプライチェーンだ。AEHRの関所を今守っているのは、まだ小さくて先行しているという事実である。それは堀ではなく、先行差だ。中国のSemiNexus Testを相手に特許訴訟を続けているという会社側の説明も、道が一本ではなくなりつつある兆候として読んでいる。
見出しが一緒に運んでくるもの
正直に書いておく。私は最初、このニュースを「SiCが戻ってきた話」として読み始めた。見出しにそう書いてあったからだ。5%という数字に当たるまで、何を確かめるべきかという枠を、見出しに預けていた。
ニュースは事実を運ぶ。同時に、どの事実を確かめるべきかという枠も運んでくる。危ないのは後者のほうだ。前者は間違っていれば訂正が出るが、後者は誰も訂正してくれない。
それでも枠は空けない
結論は不採用にした。理由を「株価が高いから」と書くと、たぶん半分しか伝わらない。
たしかに数字は重い。時価総額は約40億ドル。2027年5月期のガイダンスを上限まで完全に達成しても、売上の約29倍が乗っている。上位5社で売上の約7割、四半期に売上の10%を超える顧客が3社。期中に約1億ドルを市場での追加発行で調達している。ベータは3を超える。
ただ、動かない理由はそこではない。12銘柄の枠は固定で、入れるなら誰かを出す。出す相手が今いない。半導体まわりの枠は、需要が引いた局面でも通行料を取れた実績のある会社で埋まっている。実績のある関所を、形だけの関所と入れ替える理由が見当たらない。
そのうえで、判断を変える条件は先に決めた。業績が良くなったかではなく、不採用にした理由そのものが解けたかを測るものにしてある。消耗品であるWaferPakの売上が2四半期連続で総売上の35%以上を占め、かつ絶対額で前年を上回ること(直近四半期は580万ドル、31%)。売上の10%を超える顧客が5社以上に増えるか、上位5社の比率が6割を切ること。そして2027年5月期を1億3,000万ドル以上で着地させ、翌期初のバックログが1億60万ドルを下回らないこと。装置を一度売り切っただけなのか、通行料が流れ始めたのか。それはこの3つでしか分からない。
最初の判定は10月1日、第1四半期決算の後にする。
関所かどうかは平時には分からない。需要が引いた四半期にだけ分かる。AEHRにとってその四半期はもう一度来ていて、答えはマイナス15%だった。次に来たときに違う答えを出せるなら、そのとき考える。株価が5倍になったことは、その答えではない。